『転がる石の上機嫌』

転がって、転がって、小さな善きものがあなたに届けられますように。

奇跡を信じたい瞬間に【音楽】

人は、皮や骨や血を取り除き
細胞レベルにまで分解していくと、
最後には音(震動)だけが残るのだそうです。


だから人間は自然に、本能的に、音楽を欲するのだと、
そんな話をいつか聞いたことがあります。
それが真実かそうじゃないかはともかくとして、
あぁだからか…とものすごい説得力で
心にすとんと落ちたのを覚えています。


経験として知っている事実。
そしてバイブレーションとリズム。
人は、音楽で出来ている。
何て素敵なのだろう、強くそう思ったのでした。


音楽にしてもその他のことにしても、
かなり雑食タイプである私は常日頃から
いろいろなジャンルの音楽を浅く広く
齧る程度に聴くのですが、まれに理屈抜きに
体温が1,2度上昇するような、
心臓が跳ね上がり、身体を流れている血が
一気にぞわっと波立つような、
そんな音楽に出会います。


Jackson Sistersの“Miracles”も
そんな曲のひとつ。
低く唸る一瞬のギター音から
スタートするファンキーな音楽と
I Believe in Miracles Baby …”と
彼女たち5人の息の合ったコーラスに、
初めて聴いた瞬間から雷に打たれたような
衝撃を受けたし、心臓を鷲掴みにされたものです。
それは折に触れて聴いている今でも
全く変わらないのがすごい。


CDプレイヤーを起動させ、その旋律が
空間に流れ出す瞬間から、強く、激しく、
熱いうねりとなって、身体の奥底にある「何か」を
奮い立たせてくれるのでした。
魂レベルで感応してしまう、まさにそんな曲。


何かを強く信じたい時に。
もしくは、これから起こる大きな
何かに身を委ねたい時に。
わくわくとドキドキを
自分の中に探している時に。


この曲はそんな時、とても有効で優良な
効き目を発揮してくれると思います。


ジャクソン・シスターズ

https://youtu.be/hBBzrHXu1Fg

「つきがいちばんちかづくよる」

寒い日が、続きますね。
こちらでも数日前に雪がたくさん積りました。


雪は、良いですね。
しん、とした静けさ。
真っ白な風景。
すべてが帳消しになって、
世界がまた最初から始まっていくような
そんな錯覚すら覚えます。


大人になるほど「朝の通勤」とか
「雪かき」なんてワードが頭の中に真っ先に
イメージされて、子どもの頃ほど
素直に喜べなかったりもしますが
それでも窓外の風景が一面真っ白なのを見ると
多少なりとも「おっ」と思うものがあったりします。


「今日も夜から雪が降るかもしれないよ」と
そんな声がちらほら聞こえていた昨日土曜日、
久しぶりにふと絵本が読みたくなって
図書館に行ってきました。


余白のある世界が好きで、
私は時々絵本を読みます。
文字が少ないから頭も疲れないし、
なんといっても色使いが美しい。
ページから溢れ出そうなぐらい
豊かな色彩を眺めているだけで
心がとても楽しくなります。


絵本棚の前を歩いていて、
そう何秒もしないうちに
ふっと目に入った本がありました。
やわらかな色彩のイラストも素敵だし
「つきがいちばんちかづくよる」
というタイトルも、とても良い。


黄色いチェックのシャツを着て
白いズボンを履いたおしゃれな黒猫が、
自分のためだけにとっておきの
場所を探し出すお話です。
みみのアンテナをぴん、と立てて。
ひげのアンテナぴぴん、と張って。


黒猫はひたすらにその場所を探します。
どこまでも歩きます。
ぴったりの場所が見つかるまで、妥協はしません。
どこまでもどこまでも探します。
そうしてついに、「あること」をするための
念願のベストスポットを探し当てます。


とても可愛いお話です。
そして、最後まで読むと
心がほくっと温まる。


こんなやわらかな心と視点で
世界をいつも眺められたらいいな。
そんなふうに思いました。


可愛い黒猫と同じように
自分の中のどこかにも
きっとアンテナはあるはずで、
だから、それをぴぴんと張って、歩き出そう。
心地良くいられる場所を探しに行こう。
そんなふうにも、また思ったのでした。



今夜は満月。
良い月が見れたら、黒猫さんのように
私もお願いしたいと思います。


「おつきさま おつきさま
きっと いいこと ありますように
みんなに すこしずつ ありますように」


つきが いちばん ちかづく よる (えほんのぼうけん (65))

「運命の恋人」

年が明けて、2016年になりました。
日々はあっという間に過ぎてゆきますね。
大事に大事に過ごしていこう、とますます強く思う最近です。


久しぶりに本のことでも…と思い
棚に視線を巡らせたところ、
ちょうど良い作品と目が合いました。
『おめでとう』というタイトルの短編集です。


出版年は2000年。
私が川上弘美さんという小説家を
好きになった、最初のきっかけの本です。


『運命の恋人』は、収められている
12の短編の中で11番目の作品になります。
恋人が突然桜の木のうろに棲み始める、という
ちょっと奇妙なところから話は始まってゆきます。
そして現実と非現実の分量と境目は少しずつ
ぐにゃり、とゆがみ面白く形を変えていきます。


うろに棲み始めた恋人には、
変化が見えるようになります。
少しずつ毛深くなったり、指と指の
間に綺麗な水かきができるようになったり。
でも主人公は、それを驚きもせずに
淡々と受け止めているのでした。


やがて別の男と結婚し、子どもができ、
子孫が1000人を数えるようになった頃、
彼女はふと昔の恋人を思い出し、
彼に会いに行きます。


かつて恋人同士だった2人の、
消えない灯のように強く
惹かれあっている関係性が、
さらりとユーモラスに描かれていて、
それがとても胸を打ち、
同時に気持ちをふんわりと
温めてくれるのでした。


運命の恋人。
時を経て、遠く違う場所にいても、
想っていられる人がいる。


そういう人が心の片隅に存在するということは、
それだけで人生の彩りが豊かに
なっていくことかもしれないですね。


12篇目の表題作『おめでとう』も
韻を踏んだ詩のような、
お正月らしくとても素敵な作品です。
少しだけ引用しますね。


“ おめでとう、とあなたは言いました。
おめでとう。まねして言いました。
それからまた少しぎゅっとしました。

 忘れないでいよう、とあなたが言いました。
何を、と聞きました。

 今のことを。今までのことを。これからのことを。
あなたは言いました。
忘れないのはむずかしいけれど、
忘れないようにしようとわたしも思いました ”


新しい一年が始まり、
寒い寒い日々がもう少しだけ続きます。
けれど心はできるだけぽかぽかでいたい。
できればあなたにもぽかぽかでいてほしい。
そんなふうに思う新春。
星が、とても綺麗な夜です。


おめでとう (新潮文庫)

ヨガについて、あれこれ

ヨガが、好きです。


ゆるく、細々と続けて、なんだかんだで
もう10年近くが経とうとしています。


ゆったりと呼吸をし、気持ち良く体を弛緩させ、
自分の身体と心だけを静かに見つめる。


体のことだけに偏らず、
かといって精神世界一辺倒でもなく。
単なるエクササイズとは少し違う、
興味深い世界がそこにはあります。


そんな世界に魅入られて、この晩秋から
RYT(全米ヨガアライアンス)200時間コースという、
少々長い名前の資格取得を目指すことに決めました。


「今日はこのぐらいでいいか」と好き勝手に
アーサナ(ポーズ)をしていた時とは違い、
より効果を高めるための正しい形・正しい
アーサナを覚えるのは肉体的にわりとヘビーです。


そして心の奥底にあるものと向き合って、
その扉を開くために自分の感情や経験を
知り合ったばかりの人たちにオープンにして
シェアしていく作業というのは、
場合によってはかなり恥ずかしかったり
苦しいもので(実際泣いてしまう人もいる)、
なかなかの勇気が必要です。


でもそれは同時に自分を軽くするための
解放でもあって、自分以外の誰かにそれを
見守っていてもらう、というのは存外に
包み込まれているような温かさがあり
心地良いものだなと、今は
個人的に
そう感じています。


「美しいものを見て、
美しいものを聴きなさい。
そして美しい言葉を話し、
滋養のある美味しいものを食べなさい」


私に最初にヨガを教えてくれた先生の言葉です。
このブログを始めるきっかけになった
「縁を度す」という言葉とともに
今でも胸に深く刻まれています。


何をもって「美しい」とするかは千差万別で、
人それぞれではありますが、私はそれを
ヨガで見つけられたらいいなと思っています。


そして見つけたり得たものを少しでも多くの人に
伝えることができたらいいな、と。
この場所で。もしくは縁のある違うどこかで。


世界にはさまざまなものが溢れていて、
美しくないものもたくさんたくさんあるけれど、
夜空に浮かぶ星を集めるように
煌めくものを大事にしていきたい。
だからこそ世界は美しいのだと
そんなふうに思います。


太陽礼拝をした後に寝入ってしまい、
気づけばヨガマットの上で
目覚めたクリスマスの朝。


聖なる日に思うのは、
どうぞ生きとし生けるすべてのものに
幸せがありますことを。

皆様どうぞ、素敵なクリスマスを
お過ごしください。


Om.

ポケットの中の宇宙【創作】

あなたの手が わたしの手を取り

そっと コートのポケットに引き入れる

そこは 温かく 安全で

とても心地の良い場所だ

舗道には 無数の葉っぱ

通り過ぎてく バスの音

ほころんでしまう 唇に

必死で 平静をよそおわせ

さくさくさく、と わたしたち

朝7時の道を歩む

https://instagram.com/p/-EcfBvjTM7/
ある朝。出勤前の道



「1人やん!」と誰かからつっこみが入りそうですが
なんとなくのイメージで。
朝と舗道と落ち葉の写真。

たゆたう 【創作】

あたたかくも つめたくもない

ゆるやかに流れる 水のなかで

それは

しずかに たゆたっている

ほのかに光さす うすくやわらかな青に包まれて

それは

こぽこぽ、と ときおり泡をたてながら

ゆっくりと 流れてゆく

数をこなす

「質の良い映画に出会うためには、
数をこなさないとなんですよね」。


ある朝。
テレビ番組を見ていたら、
ふとこんな言葉が耳に入ってきました。
個性派と最近注目されている、
ある若手俳優さんの言葉です。


彼はとても映画好きで、
どんなに仕事が立て込んで忙しい時でも
ちょっとした隙間時間を見つけては
映画館まで足繁く通っているようで。


「よく行けますね」
「よほど映画がお好きなのですね」
感心と驚きを交えながらのアナウンサーに対して
彼が発したのが前述のひと言でした。


確かに、そう。
心ときめいて身体中の細胞が躍り出すような、
もしくは胸に深くずしんと響くような、
自分にとって「質の良い」映画というのには、
そうそう簡単には出会えない。


やはり目の肥えた感性の高い人でもそういう
ものなのだなぁとどこか安堵するような、
目からウロコが落ちるような、そんな
気持ちになったのでした。
むしろ目が肥えて感性が高いからこそ、
余計にそうなのかもしれない。


そしてそのことについてしばらく
思いを巡らせながらふと、それは
映画のことだけではないのだろうなぁという
思いに行き当たったのでした。

様々なことに通ずる、ある種の真理。


自分にとってほんとうに「好きなもの・好きな人・
高みを目指したいもの」に出会うためには、
まず自分からアクションを起こし、
数をこなしてゆく必要が
あるのかもしれないですね。


出会って、見て、感じて、
そこから学んでゆく、磨いてゆく。
そこで初めて自分にとってほんとうに
必要なものが与えられるのかもしれない。


“頭も、身体も、使えば使うほど
強くなる。賢くなる”
ある本で読んだ一文がふっと頭を
よぎった一瞬でもありました。


じっと待っているよりも自分から
出会いに行くほうが、ずっと勇敢で
幸福な早道なのかもしれません。
そこから、あなたの人生は好転していく。
もしそうならなかったとしても、
きっと後悔は少ない。


ちなみに冒頭で紹介した若手注目俳優さんとは、
柄本佑(たすく)さん。
父の柄本明さんそっくりの、奥底に深い光を
秘めた細い目を持ち、派手ではないけれど
強く惹きこまれる演技をする素敵な役者さんです。


動ける時には、動こう。
そして必要なものに出会いに行こう。
たとえ期待通りではなかったとしても、
いつか出会える、
見つけられると信じて。

そんなことを思った、
ある朝でした。

「数をこなす」。
なかなか、奥深い言葉ですね。


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