『転がる石の上機嫌』

転がって、転がって、小さな善きものがあなたに届けられますように。

「倚りかからず」

「もはや

 できあいの思想には倚りかかりたくない

 もはや

 できあいの宗教には倚りかかりたくない

 もはや

 できあいの学問には倚りかかりたくない

 もはや

 いかなる権威にも倚りかかりたくはない

 ながく生きて

 心底学んだのはそれぐらい

 じぶんの耳目

 じぶんの二本足のみで立っていて

 なに不都合のことやある

 

 倚りかかるとすれば

 それは

 椅子の背もたれだけ」

     

       (茨木のり子 詩集「倚りかからず」より)

 

・・・・・・・

 

「詩」というものが好きです。

といっても限られた詩人の方の、一部の詩だけなのですが。

 

短く自由な形式の文の中に、作者の思いや感情がぎゅっと込められているところに魅力を感じます。

 

冒頭に記したのはその詩人の中でも特に好きな茨木のり子さんのもので、茨木さんを知るきっかけとなった最初の詩です。

初めてこの詩に触れた時、なんて強く美しく凛とした詩なのだろう、とハッとしました。

 

・・・・・・・

 

実は今月某日に誕生日を迎え、また一つ新たに歳を重ねたわけでありますが、この茨木さんの詩を読み返しながら、自分の目や耳でもって大事なことを判断したり取捨選択をして、背筋をしゃんと伸ばして生きていける、そんな人間になれたらいい。

あらためてそう感じた次第です。

 

・・・・・・・

 

暦の上では先日、二十四節気の一つである「雨水(うすい)」をむかえ、少しずつ草木の芽が出始める季節を迎えましたね。

春を予感させるような暖かい日もたまにやって来るようになりました。

 

咲き出す花々を眺めながら、カラフルな春服を着て、軽やかに散歩ができる日を今からとても楽しみにしています。

 

それでは。

 

 

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