『転がる石の上機嫌』

転がって、転がって、小さな善きものがあなたに届けられますように。

「旅の短編集」

この本とは、だいぶ昔に古本屋で出会いました。タイトルと装丁に惹かれて即決で購入したのを覚えています。とはいえすぐに読破することはなく、折に触れ開いたページのところからちびりちびりと読み、気が済むとまた本棚に戻し…と、そんな読み方をしている本です。

 

ロンドン、ブエノスアイレス、パリ、ロサンゼルス…。様々な都市や国を舞台に架空の旅が綴られています。

たとえば、飲むと目の前に本当の海が現れる「モルジブ」という名のカクテル。たとえば、紅海のほとりで偶然に撮影してしまった人間の形をした魚。たとえば、満月の夜にひとりでに跳ねるカリフォルニア東部の砂漠にある大きな兎型の岩、などなど。

1話1話はとても短く簡潔なエピソードなのですが、読んでいると静かな湖面に小石を投げ入れられて波紋が広がるような、不思議で味わい深い余韻が残ります。

 

春夏版と秋冬版が出ているので、その時の季節に合わせて読めるのも気に入っているところ。

なかなか旅には出られない今、本を読みながら頭の中で旅をするのも良いものですね。いつかまた普通に旅が出来るようになったなら、この本を片手に旅に出たい、とそんなふうにも思わせてくれる本です。

 

原田宗典さん、一時期の薬物問題でぱたっと表舞台から姿を消してしまい、どうしているかと心配だったのですが、その後はスローペースながら地道に執筆活動されているようなので良かったです。

 

旅、と聞いてあなたが思い浮かべる本は何ですか。もしくは旅をする時に、一緒に連れて行きたいと思う本はありますか。

もしあれば、今度ゆっくり教えてくださいね。

 

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