『転がる石の上機嫌』

転がって、転がって、小さな善きものがあなたに届けられますように。

「人生万歳! 」

少し前にDVDでウディ・アレン

『人生万歳!』という映画を観ました。

 

人生讃歌を思わせる前向きな

タイトルなのですが、

ラリー・デビッド演じる

初老の主人公ボリスは

とにかくシニカルで悲観的で

ネガティブです。

 

なんでも否定から入って

周りをも暗くさせてしまうタイプが

身近にも実際にいるものですが、

ボリスもまさにそんな人。

根は優しくて思いやり深いのに、

ひねくれ者と誤解を受けやすいのです。

 

そんなボリスがある夜、

家出をして露頭に迷った若い

女の子メロディと出会い、

行きがかり上、家に泊めて

あげることになります。

無邪気でエネルギッシュな彼女に

ペースを崩され、最初こそ早く

追い出したがっていたボリスですが、

次第に気持ちは変化していきます。

 

このボリスとメロディを中心に、

2人を取り巻く人々の人間模様が

描かれてゆきます。

テンポ良く、心楽しく、

そしてちょっぴりしみじみもする

素敵な映画でした。

 

映画のラスト近く、ボリスのこんなセリフが心にとても沁みます。

 

「あらゆる幸せは束の間だ。
だからこそ上手くいったら
〝何でもあり〟だ。
でも勘違いするな。
それは才能とは無関係。
あなたが存在しているのも
〝運〟なんだ」

 

時折、からかうように、

そして何かを諭すように、

スクリーン側から映画を楽しむ

私たち観客に向けて

語りかけてきたり視線を

送ってくるボリスや

ほかの登場人物たちが

とてもチャーミングな

映画でもあります。

 

奇跡のようにこの世界に存在し、

生きて、呼吸してるなら、

つかの間の幸福を

思う存分堪能しよう、

めいっぱい楽しもう。

そんな明るくて温かい

気持ちになることができました。

 

f:id:orange-camomille1402:20170420012347j:image

 

 

【映画データ】

2009年 アメリ

監督:ウディ・アレン

出演:ラリー・デビッド

    エバン・レイチェル・ウッド

    パトリシア・クラークソン  ほか