『転がる石の上機嫌』

転がって、転がって、小さな善きものがあなたに届けられますように。

「旅の短編集」

この本とは、だいぶ昔に古本屋で出会いました。タイトルと装丁に惹かれて即決で購入したのを覚えています。とはいえすぐに読破することはなく、折に触れ開いたページのところからちびりちびりと読み、気が済むとまた本棚に戻し…と、そんな読み方をしている本です。

 

ロンドン、ブエノスアイレス、パリ、ロサンゼルス…。様々な都市や国を舞台に架空の旅が綴られています。

たとえば、飲むと目の前に本当の海が現れる「モルジブ」という名のカクテル。たとえば、紅海のほとりで偶然に撮影してしまった人間の形をした魚。たとえば、満月の夜にひとりでに跳ねるカリフォルニア東部の砂漠にある大きな兎型の岩、などなど。

1話1話はとても短く簡潔なエピソードなのですが、読んでいると静かな湖面に小石を投げ入れられて波紋が広がるような、不思議で味わい深い余韻が残ります。

 

春夏版と秋冬版が出ているので、その時の季節に合わせて読めるのも気に入っているところ。

なかなか旅には出られない今、本を読みながら頭の中で旅をするのも良いものですね。いつかまた普通に旅が出来るようになったなら、この本を片手に旅に出たい、とそんなふうにも思わせてくれる本です。

 

原田宗典さん、一時期の薬物問題でぱたっと表舞台から姿を消してしまい、どうしているかと心配だったのですが、その後はスローペースながら地道に執筆活動されているようなので良かったです。

 

旅、と聞いてあなたが思い浮かべる本は何ですか。もしくは旅をする時に、一緒に連れて行きたいと思う本はありますか。

もしあれば、今度ゆっくり教えてくださいね。

 

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「王様と私」

王様と私』という古い映画を先日DVDで観ました。

ユル・ブリンナー演じるシャム国(タイ)の王様と、彼の子どもたちを教育するため英国から呼ばれた教師アンナ(デボラ・カー)の心の交流を描いたミュージカル作品。

 

ユル・ブリンナーの顔だけは以前から知っていたものの、彼が動いて、演じて、歌って、踊る姿を見たのは初めてだったので、なんだか新鮮な感動でした。

 

個人的にとくに印象的だったのは、王様が国の繁栄や民の信望を得るために一体自分はこれからどうするべきなのかと歌に乗せて思い悩むシーン。

普段、家臣や一族の前では強気で傲慢すぎるように見える王様の、人間らしい一面が垣間見れて好感が持てました。

あと、王様がアンナに自分の子どもたちを引き合わせるシーンがあるのですが、次から次へと切れ目なく子どもたちが登場してきて、それが笑えました。スクリーンに全員は出てこなかったけれど、王様によると確か総勢60数名とか。凄い、凄すぎるよ、王様…。

そして、王様とアンナが手に手を取って軽やかに踊るあの有名なシーンも、おぉこれがあの有名なダンスシーンか、と楽しい気持ちで眺めることができました。

弾むように、跳ねるように、楽しげに踊る2人の姿が印象に残ります。

 

ただ楽しいだけの映画ではなく、根底には女性蔑視、奴隷問題など当時の社会問題が描かれていて考えさせられる部分もあります。

そして期待どおりハッピーエンドで終わるのかなと思いきや、思わぬ展開で幕が閉じるので個人的には満点星5つのところ星3つ評価ですが、世界的クラシカル映画の名作を自分の目で見て感じることが出来たのは良かったかな、という感じです。そういえば衣装もとても凝っていて素敵でした。

日頃の憂さを忘れて「Shall we dance?」とはなかなかいかない昨今ですが、心はなるべく自由でいたい。そんなふうに思う今です。

 

朝晩に、涼しい風が混じるようになりました。秋が、少しずつ近づいて来ているようです。どうかご自愛してお過ごしくださいね。それでは、また。

 

 

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【映画データ】

   1956年アメリ

 監督:ウォルター・ラング

 出演:ユル・ブリンナー、デボラ・カー

    リタ・モレノ

最近のヨガ近況④

「1日1ポーズだけでもいい。

何なら瞑想だけでもいい。

とにかく1年に300日以上、

ヨガの練習をする」

 

というのを2021年の目標としているのですが、

日々の練習内容を手帳に記録したりTwitterのヨガ用アカウントに投稿したりしているうちに、だいぶ今まで以上にヨガが日常に定着するようになりました。

 

いついつに何ポーズこなしているから偉いとか凄いということではないし、そもそも自分で納得していれば外に発表することでもないのかな、と迷ったこともあったけれど、自分を含め「外側に見せる」「数値化する」という行為は時としてパワーを生んでくれるものなのだなぁ、と実感してるところであります。

 

いつも見守っていてくださる方、

「いいね」を押してくださる方、

改めてありがとうございます。

元気と、モチベーションをいただいております。

この場を借りてお礼まで。

 

ちなみに、今年上半期のヨガ日数は

集計したら下記のようになりました。

1月→30日/ 2月→27日/ 3月→27日

4月→23日/ 5月→21日/ 6月→29日

 

瞑想は雑念だらけで終わることもあるし、ポーズ数も日によってバラバラという全くの自己流なので、心身がどう変化したのかという実感は正直言ってほとんど無いのですが(汗)、それでも身体の状態をじっくり見つめながら自分のペースで動くのは楽しいし、たまに休むことはあっても何とか続いている、私にも続けられるものがあるのだ、という微かな自信が生まれているのは自分にとって、とても嬉しいことだったりします。

 

下半期も、このペースでゆったりやっていけたら良いな。

もしよろしければTwitterでもyoga sukra(ヨガ シュクラ) @yoga_sukra名義で日々の練習内容やヨガ雑感を呟いているので、ご興味ある方は覗いたりフォローいただけると私がとても(泣いて)喜ぶのでどうぞよろしくお願いします(笑)。

 

梅雨がほとんどの地域で明けましたね(北海道に梅雨がないということを今日まで私、知りませんでした…)。

明けた途端に気持ち良く晴れて、今日は午前中から大張りきりで布団を干したり部屋や窓の掃除をしました。

鳴き出した蝉もなんだか嬉しそうで。

やっぱり夏はこうでなくっちゃ。

 

どうかこれ以上の災害なく、熱中症で倒れるほどの暑さにもならず、穏やかで平和な夏になることを願います。

 

それでは、また。

 

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オススメ音楽2021梅雨編

昔から友人などに音楽や本の「オススメ」をするのが好きな性質です。

 

好評価な反応が返ってくるのは打率1割といったところで少し寂しくはあるのですが(「どうだった?」と後で聞くと「うーん…」とか「あんまり好きじゃない」とはっきり言われてしまうこと多々💦なのですが)、仕方ないですね。ほぼ押し付けなので(笑)。

知ってもらえただけでとりあえず満足ということにしています。

 

そういえばこのブログで音楽のことについてあまり書いてなかったな、と思いつき、突然ですが「オススメ音楽2021梅雨編」と題し(そのままや)最近の私のオススメを3曲紹介したいと思います。

気に入っていただけたら嬉しいです。

 

①< keshi >  「beside you」

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https://youtu.be/eIQ3t1pkcOw

最近Instagramを通じて知ったkeshi。

1994年生まれのベトナムアメリカ人とのこと。

ソフトな歌声に穏やかな音楽が耳に心地良いです。

「beside you」は恋人のいる女の子を一生懸命口説いている男の子の目線で描かれた曲なのですが、歌詞が特に切なくて、思わず胸がキュッ(死語?)となります。

添付したYouTubeの動画には歌詞の和訳が付いているので、見れる方はぜひ、この歌詞の世界を味わっていただきたいです。

 

 

②< NOKKO > 「レモン」

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https://youtu.be/TI7iNl-1Qm8

言わずと知れた伝説のバンドREBECCAのヴォーカリストNOKKOの92年のソロアルバム『Hallelujah(ハレルヤ)』に収録。

最近レモンが流行ってるなぁ〜ということでこちらをセレクトしてみました。

レモンのように爽やかなサウンドnokkoの力強く甘い歌声が乗って、心弾む一曲となっています(米津玄師の「Lemon」を選ばないところに我ながら世代を感じてしまう)。

REBECCA時代の尖ったNOKKOもカッコ良かったけれど、ソロ活動後の程よく肩の力が抜けたNOKKOもこれまた素敵なのです。

 

 

③< AJICO >   「ぺピン」

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https://youtu.be/PZaIk-Jnwlo

「愛してた/あいつのこと

 心から/ 好きだった

 でも今は/ 水色の

 夕焼けが/ 目に染みる」

 

20年ぶりに再結成したAJICOの「ぺピン」がすごく良くて、最近ずっとヘビロテして聴いていました。

パンチの効いたサウンドUAと浅井さんのツインボーカルがとても格好良いです。

歌詞もまた美しく、沁みます。

 

以上、私的オススメ3曲でした。

気が向いたらまた別の季節に音楽のことを書ければ、と思います。

 

これを読んでいるあなたは最近どんな音楽を聴いていますか。

どんなアーティストがお気に入りでしょうか。

思いを馳せながら今日はここまで。

 

梅雨のジメジメは嫌だけど、家の中で聞く雨音はどこか心を穏やかに和らげてくれるような気もしています。

それでは。

 

 

もう会えない人たちへ

ある程度の年を重ねて大人になると「かつてはあんなに仲良くしていたのにもう会えなくなってしまった人、もしくは会わなくなってしまった人」というのが一定数出てきます。

 

自分の不用意な発言で意図しないまま相手を傷つけてしまったり、無神経な行動で不快な思いをさせてしまったり、あるいは特に原因や理由も思いつかないまま自然消滅的に疎遠になってしまったり。

パターンは色々あるけれど、心にほんの少し苦いものを残したまま、離れていったその人たちへの感情は未消化となってゆきます。

 

あの時はごめんなさい、とか、もし機会があればまた会えると嬉しいです、とか時に頭の中をとりとめもなくグルグルと言葉が巡るけれど、それを伝える機会もなく、ただぼんやりふっとその人たちのことを思い出しては「どうしているかな」とたまに考える日々を過ごしています。

仲良くしていた頃が懐かしい時もあるけれど、もうそのステージは終わってお互いに新たなステージに立っているのかな、ともまた思うようにしています。

 

あの時、楽しい時間は確かにあった。

その人たちから学ぶべきこともしっかり学んだ。

改めなければならないこともちゃんと教わった(もちろん人間なので過ちは繰り返してしまうかもしれないけれど)。

だからちょっぴり胸が苦いけれど、これで良かったのだ。

そう思うようにしています。

 

頻繁に会ったり、食事を一緒にとったり、電話やメールでまめに連絡を取り合ったり、そういうことだけが恋愛や友情の定義ではないはずで、だから自分の心の内にある確かなものを大事に信じながら、かつての人たちへの感謝の気持ちを忘れずにいたい。

そんなふうに思います。

 

さようなら。

そしてたくさんの大きなギフトを与えてくれたことに感謝を。

 

さようなら、と書いたけど、もしも縁があればまたどこかで繋がれるはずだから、そんな奇跡があるといいなとうっすら信じながら今日はここまで。

 

関東の梅雨入りももうすぐそこ、といったところです。

 

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「1Q84 」

昨年の12月から村上春樹さんの『1Q84』という小説を久しぶりに再読していて、4月にようやく読み終えることができました。

 

不思議な小説です。

 

それぞれの登場人物たちが、予期せぬうちにある分岐点を境にそれまであり得なかった世界に入り込んでしまうという、SFともファンタジーともラブストーリーともつかぬ物語。

 

天吾(てんご)と青豆(あおまめ)の2人を主軸に章は交互に語られ、BOOK3からは2人をじわじわと追い詰めてゆく牛河(うしかわ)の章も加わり、3人の距離は少しずつ縮まりながら、より緊迫した展開を見せてゆきます。

 

ところで村上春樹作品で好きなところは、登場人物たちが日々をきちんと生きているところかな、と思うのです。

自分が欲しているものをちゃんと素材から料理して食べていたり、運動や身の回りのことなど日々のルーティンを大切にしていたり、そういうところがとても良いな、と思います。

 

1Q84』も、なぜそうなる?と思うような奇想天外な出来事が数々出て来るのですが、なんとなく納得がいってしまうのは、登場人物たちがそれはそれとして現実をちゃんと受け入れて、日々を大切に生きているからなのかもしれません。

 

ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」、プルーストの「失われた時を求めて」、ジョージ・オーェルの「1984」など、それまで触れたことのなかった音楽や文学作品がそこかしこに散りばめられて、また新たな知的好奇心の扉を開いてくれるところも春樹作品の特徴で嬉しい部分ではないでしょうか。

 

長編小説、良いですね。

以前は長編って苦手で短編のほうが好きだったのですが、読み終えるまでその作品世界に長くとっぷりと身を置けるところが長編の魅力で素敵なところだなぁと思います。

読んでいるこちらまで物語の一部に含まれるような、そんな気持ちにもさせてくれます。

 

読み応えある長編小説をお探しの方がいましたら、私的には『1Q84』お薦めします。

それでは、良いGWをお過ごしくださいね。

 

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明るいものと暗いもの

いつか受けたヨガクラスで、その時の先生からこんな言葉を教わりました。

 

「"朝"という漢字をバラすと十月十日(とつきとおか)になるでしょう。

これは赤ちゃんが母親の体内で過ごす月日とほぼ一緒であると言われています。

私たちは夜寝る時に一度死に、朝になるとまたもう一度新しく生まれ変わって生きるのです」。

 

また、学生の時に読んでいた漫画にこんな言葉が載っていて、以来、座右の銘というほどでもないけれど、しんどい時のお守り言葉になっています。

「朝の来ない夜はない」。

どんなに思い悩んでいても、いずれは明るい希望に溢れた時はやって来る。月並みな言葉のように思えるけれど、初めて出会った時はどしん、と胸の内に響きました。

 

ところで私たちは朝=明るいものを善、夜=暗いものを悪と捉えがちな一面がありますが、最近は本当にそうなのかな?と少し考えるようになりました。

今まで持っていた自分の価値観に、ふと疑問を持つようになったのです。

 

光があるから闇がある。

朝が来るから夜が来る。

生があるから死がある。

それは、どちらが良いも悪いもない。

 

暗闇は時に優しく、豊かです。

光の中を走り抜けるための力を蓄えてくれます。

そして、暗闇があるからこそ、朝のありがたさが一層強く感じられる。

死があるからこそ、生は喜びに包まれる。

 

暗闇の只中にいると、なかなか自分がどこにいるのか気づけないし、ずっとこのまま先が見えない世界にいるのかと途方に暮れて悲しくなってしまうこともあるけれど、明るいものと暗いもの、どちらが良い・悪いではなく、あるがままを冷静に受け止めて、その時にしか気づけないことを感じ取って生きていけたらいいな、とそんなことを思ったりしているこの頃です。

 

なかなか難しいことだけれど。

 

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