昨年の12月から村上春樹さんの『1Q84』という小説を久しぶりに再読していて、4月にようやく読み終えることができました。
不思議な小説です。
それぞれの登場人物たちが、予期せぬうちにある分岐点を境にそれまであり得なかった世界に入り込んでしまうという、SFともファンタジーともラブストーリーともつかぬ物語。
天吾(てんご)と青豆(あおまめ)の2人を主軸に章は交互に語られ、BOOK3からは2人をじわじわと追い詰めてゆく牛河(うしかわ)の章も加わり、3人の距離は少しずつ縮まりながら、より緊迫した展開を見せてゆきます。
ところで村上春樹作品で好きなところは、登場人物たちが日々をきちんと生きているところかな、と思うのです。
自分が欲しているものをちゃんと素材から料理して食べていたり、運動や身の回りのことなど日々のルーティンを大切にしていたり、そういうところがとても良いな、と思います。
『1Q84』も、なぜそうなる?と思うような奇想天外な出来事が数々出て来るのですが、なんとなく納得がいってしまうのは、登場人物たちがそれはそれとして現実をちゃんと受け入れて、日々を大切に生きているからなのかもしれません。
ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」、プルーストの「失われた時を求めて」、ジョージ・オーェルの「1984」など、それまで触れたことのなかった音楽や文学作品がそこかしこに散りばめられて、また新たな知的好奇心の扉を開いてくれるところも春樹作品の特徴で嬉しい部分ではないでしょうか。
長編小説、良いですね。
以前は長編って苦手で短編のほうが好きだったのですが、読み終えるまでその作品世界に長くとっぷりと身を置けるところが長編の魅力で素敵なところだなぁと思います。
読んでいるこちらまで物語の一部に含まれるような、そんな気持ちにもさせてくれます。
読み応えある長編小説をお探しの方がいましたら、私的には『1Q84』お薦めします。
それでは、良いGWをお過ごしくださいね。