『転がる石の上機嫌』

転がって、転がって、小さな善きものがあなたに届けられますように。

「ビジネスライクの優しさ」について

そういえば新年の挨拶もしないまま、いつの間にか2月に入ってしまいました。
今日は立春ですね。
遅いですが、あらためて明けましておめでとうございます。

きのうは節分でしたが豆まきなどはしましたか?
我が家では母と私の2人でご近所に声がもれない程度にひっそりと「鬼はそとー、福はうちー」をやりました。
なんだかね、あれを大声でやるのがちょっと気恥ずかしいのですよね。
よい年齢の大人になると特に。なぜだか。

前々回に更新したブログに昨年11月から入院していたことを書いたのですが、ようやく数日前に無事退院ができ、ほっとしているところです。

2017年からこっち数回の入退院を繰り返していてもうウンザリするほど本当に懲りたし、でもそのおかげで晴れた日には太陽の光を思う存分浴びれるということがどれだけ幸せで素敵なことなのかをしみじみと実感できたりもして、ある意味学びの多い時を過ごすことができました。

入院中に何をしていたかというと、これがもう本当に全くすることが無くて。
時間の経過の遅いことといったら。
テレビや新聞のニュースは全く頭に入らないし、日に3度の食事時間だけを目安に生きているような日々でした。

でもそんな中で慰められていたものがあり、それは家から持ち出して来た、ずっと好きで何度も読み返してきた馴染みのある読み物たちでした。
すぐ疲れてしまうのでちょっとずつしか読めなかったけれど、ちょうど良い気分転換&時間つぶしになってくれました。

ざっと紹介すると村上春樹さんのエッセイ、江國香織さんの恋愛小説、そしてマニアックなところでは、なるみさんという方が書かれた『高崎ビジネスホテル探検記』のzineなど。

このzineは、タイトル通り群馬県高崎市に点在する10ほどのビジネスホテルを紹介するという実にシンプルなコンセプトのもと制作されているのですが、これが実に濃くて深くてユーモラスで。

そのホテルに泊まった体験をもとに独断と偏見(著者ご本人が最初にそう説明されている)で書かれているのですが、文章の面白さはもとよりホテルイラスト全編手描きと思われる涙ぐましい努力を感じさせるビジネスホテル愛で溢れていて、地元民であってもなくても読み物として楽しめる面白いzineなのです。

そのなるみさんのzineには、大きくどどん、とこんなことが断言されていました。
「ビジネスホテルは生物です」と。

どんな人が泊まり、何の目的で滞在するかによってホテルの雰囲気は変わる、のだとか(考えてみればそれもそうですね)。
そしてそのzineの最終ページで、なるみさんはビジネスライクの優しさについても熱くでもどこか俯瞰の目で語っていて心を打たれました。

“ビジネスライク”という言葉は一見冷たいように響くけれど、それは人の心に土足で踏み込まないある種の優しさなのだよ、と。
心に立ち入らないという癒しの形もあるのだから、と。
なるほどなぁ、と感心しました。

そして病院も、それに似ているかも、なんて私は感じたのでした。
いわゆるホスピタリティ・ビジネスとでもいうのでしょうか。
泣いても、叫んでも、ゲラゲラずっと笑い転げても、そしてうっかり糞尿を垂れ流していたとしても、同等のスルー(もちろん程度にもよるけれど)。
まるでもう心に色々を貯めこまず発散させてもいいのだよここは、と言われているようで私は安心して今までの全てをさらけ出すことができたのでした。

そんな私を生温い目で見守り、叱り、そして時には貴重なアドバイスもくれた先生はじめスタッフの皆さん、大変お世話になりました。
そして本当にどうもありがとうございました。
もちろんこのブログを毎回もしくは時々気にして覗いてくださるあなたにも感謝を。

鬼は来ませんように。
福はどんどん入って来ますように。
2019年、良い1年にしましょうね。
今年もどうぞよろしくお願いします。

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