『転がる石の上機嫌』

転がって、転がって、小さな善きものがあなたに届けられますように。

たったそれだけのこと

ヨガレッスンを終えた
雨の日曜日の午後。


小さな白いケーキ屋のカフェで、
先生や仲間たちと一緒にほうれん草と
きのこのキッシュを食べながら、
とりとめもなく色々な話をしていました。

通っている歯科医のこと、
生理のこと、小学生たちばかりが
通うプールのこと、ヨガのこと、
付き合いづらい人々と取らなければ
ならないコミュニケーションのこと
などなど話題は多岐にわたりです。


そんな中でふと、最近気になって
心の中でモヤモヤしていた
「あること」を先生に
ぶつけてみることにしました。


「先生、頭の中でわかってはいても
出来ないことや “こうありたい” と
思っているのに出来ない
自分の気持ちの“落としどころ”って、
どこだと思います?」


わかっていても出来ないことが
あると、悲しいし、くやしいし、
苦しいですよね。
はがゆくて、情けなくて、
時には絶望すら感じます。


そんな時、みんなはどうして
いるのだろう。
どう納得するのだろう。
単純な疑問でした。
そしてちょっぴり、すがるような。


でもたぶん、自分がヨガの講師で
生徒から突然にこんな質問を
されたらとても驚くし、
何と答えてよいものか
ものすごく迷うと思います。
けれど先生は少し考えてから、
こんなふうに答えてくれました。


「苦しむ必要はないよ。
今の自分には無理だったんだ。
そう気づけばいい。それだけ」。


気づけば意識は変わるから。
意識が変われば行動も変わるから。
それがもしできなかったとしても
「また出来なかったな」。
そう気づければ、それでいい。
そしていつか出来るようになった時には
「あ、出来るようになった。成長してる」
そう感じられて、嬉しいでしょう?


先生はそう言って、
やさしく笑ってくれました。


ただ、気づく。
ただ、認める。
今は、それだけでいいんだよ。


サクッと美味しいキッシュの後の
コーヒーは、濃くてビターで私には
ちょっと苦過ぎる気がしたけれど、
最近少し色々あって硬くなっていた心は
ゆるりとやさしくほぐされたのでした。


生きていればしんどいことは
たくさんあって、
だからまたすぐに落ち込んだり
へこんだりはするんだろうけど、
観察して、気づいて、
そこからまた少しずつ
やっていこうか、とりあえず。


他愛ないお喋りや先生の力強さや
美味しい食事にパワーをもらい、
明日からまたぽちぽちと歩んでいこう、
春だしね。
そう思いながらランチを終えて
お店を出ると、雨は小降りに
変わっていました。



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