『転がる石の上機嫌』

転がって、転がって、小さな善きものがあなたに届けられますように。

「この世界の片隅に」

またまた続いてしまいますが、
今回も映画について。


先日、こうの史代さんの
同名コミックが原作の
この世界の片隅に』を観てきました。
公開は昨年の11月からですが、
じわじわと評判が評判を呼び、
今年の2月に入ってもまだ
上映が続いています。


「戦争を背景にした、とにかく
泣ける良い映画」という前情報のみの
知識しかなかったのですが、SNSの
タイムラインに見るこの映画に対しての
コメントがみんな不思議に異様な熱を
帯びていて、とにかく今、
観ておかなくては…と何かに突き動か
されるように映画館に行ってきました。


ざっくり過ぎる感想ですが、
結論から言うと「とても良かった」です。
「良かった」という言葉しか、
もう出てこない。
そして、予想通りやっぱり
ぼろぼろ泣きました。


良いなぁ、好きだなぁと思ったのは、
主人公すずと周作の防空壕での
キスシーン、そして初めての夫婦げんか、
あとはあり合わせの食材で工夫を
しながらすずが作る食事の場面、など。


どの時代にも、人は笑って、
食べて、誰かに恋をして、愛します。
「普通」という表現を私はそんなに
好みませんが、人として誰もがする
当たり前のこと、真っ当なことを
これから先けっして絶やしてはならないし、
2度とあんな悲惨な時代を私たちは
作るべきではない、作らないように
努めていかなくちゃならないのだ、と
この映画を観ることであらためて
強く感じたのでした。


のん(能年)ちゃんの声が、すずの
おっとりとしたキャラクターにとても
合っていて、そこも鑑賞ポイントの
ひとつです。
おっとりしているけれど、強い。
強いけれど、しなやか。
やはり演技の上手い子だなぁ、
という思いと共に、これから
どんな女優さんになっていくのだろう、
という楽しみと期待を感じさせます。


戦争という重いテーマが根底にありながら、
コトリンゴさんのやわらかな歌声や
繊細な音楽、パステル画を思わせる淡い
色彩の画がやさしい雰囲気を
醸し出していて、温かな気持ちで
観ることができました。


最後に振られるすずの右手が、
きゅっと胸を切なくさせます。
今この時代だからこそ
観るべき価値のある映画だと、
強く思います。



映画データ
 【この世界の片隅に
  公開:2016年/日本
  監督:片淵須直
  出演(声):のん、細谷佳正ほか