『転がる石の上機嫌』

転がって、転がって、小さな善きものがあなたに届けられますように。

パンケーキと力士

世にスイーツは数あれど、
パンケーキほど人に眼福をもたらす
食べ物ってそうそう無いのでは、という
気がしています。個人的に。


あのふっくら感。
そしてボリューム感。
たっぷりのシロップやクリームに
デコラティブされたゴージャスな外観。


口へ運べばふわっとやわらかく、
それでいて、どことなくしっとりもした食感。
たっぷりの卵をふんだんに使った
おいしさ、奥ゆかしいほのかな甘み。
スイーツ好きには堪らない、それはもう
天にも昇る夢心地な魔法のデザート。

そんな至福の甘味・パンケーキを、
先日久々に友人数名と共に食しました。
こっくりしたキャラメル&生クリームやら、
シンプルイズベストなメープル&バターやら、
爽やかな酸味香るレモンカードやら、
季節感漂うモンブラン紫芋のアイス
クリーム添えやら、それぞれに魅惑的な
トッピングをオーダーして、ひと口ずつ
シェアするのは女子の定番のお約束。
どれもとてもおいしくて、口にするたび
「うむうむ」「おぉー」という感嘆の声が
絶えませんでした。


ひと時お喋りすらも忘れて夢中で咀嚼し、
十分にその味覚を堪能したのでありますが、
友人たちと別れて帰宅し、ほっと一息ついて
椅子に座ったら、あれれ。
ついていたテレビに何気なく目を向けた
その時に、なんだか不思議な
既視感があったのです。


そこに映っていたのは、日ごろ目にする
お馴染みの相撲中継。
いや、正確に言えば、目に飛び込んで
きたのは土俵上にいる力士たちでした。


たわわなお尻、ふくよかな胸、
ぽってりと突き出たお腹。
二の腕、肩、背中、太もも…と全てが
やわらかな丸みを帯びていて、彼らが
歩くたびにそれらがふるふると
打ち震える様子は、あたかも
「動く全身パンケーキ」のように、
この目には映ったのです。


以来、相撲中継を見るたびに
「あ、パンケーキ」と思うようになって、
可笑しいような、困ったような、
お腹が空くような、何とも言えない
気持ちになってしまうのですが、
そう感じるのは私だけでしょうか。


しかし「日本古来の神聖な国技」なんて
堅苦しく肩肘張って相撲観戦するよりも
「巨大なパンケーキ同士が激しく
ぶつかり合って競う心楽しいスポーツ」
と思って眺める方が、なんとも
メルヘンチックでほのぼのした気持ちに
なれるような気がしませんか?


というわけで「パンケーキと力士って
なんだか似ている」という、非常に
シンプルで素朴な問題提起というか、
どちらかというとどうでもいい感のある
考察の今回でした。
くだらなくてごめんなさい。
良い石を転がすというのは、
なかなか難しいことですね。


そして、こんなことを書きながら、実は
その張本人がくだんのパンケーキ・ボディに
なりつつあることに警戒感を
強めているこの頃であります。
そろそろ本気で節制をしなくては。
しかしパンケーキって、本当に
おいしいですよね。

f:id:orange-camomille1402:20180925141110j:plain

f:id:orange-camomille1402:20180925141148j:plain


【追記】
今回パンケーキを食べたカフェ
 RanRan Cafe(ランランカフェ)/群馬県富岡市
 https://loco.yahoo.co.jp/place/g-E0N1wuiW3VE/

たまご屋さんが営むカフェは、パンケーキのほかオムライスもおいしいです。
明るくてお洒落な店内は、ゆったりとしていて居心地も良し。

【追記2】
ひとくちメモ(おすすめパンケーキ・都内編)
①『レインボーパンケーキ』/原宿
https://tabelog.com/tokyo/A1306/A130601/13131895/

②『茶香』/北千住
https://tabelog.com/tokyo/A1324/A132402/13110615/

 ※ どちらも何年も前、しかも一度しか
 足を運んでないですが、あの時の
 鮮烈なおいしさは今でもはっきりと
 覚えています。ビバ!パンケーキ。
 パンケーキに幸あれ。

栗ごはん、そして風鈴をしまったこと

9月に入りましたね。

先月の終わりに、
我が家では栗ごはんを食べました。
栗ごはん、いいですね。
ほのかな甘みと、ほっくりした食感。
皮をむくのがちょっと大変だけど、
炊きたての栗ごはんを食べると、
ああ今年も秋がやって来たなぁと、
なんだかしみじみします。
ちょっと嬉しいような、
ちょっとホッとするような。


そして先日、ようやく部屋に掛けていた
風鈴をはずしました。
窓から風が入るたび、ちりん、と
可愛らしい音で小さな夏の涼を
届けてくれていた愛しい風鈴とも
来年までお別れです。


鮮やかな赤いアサガオの花が
絵付けされたガラス製のその風鈴は、
20数年前に友人とお揃いで買いました。
夏の始まりに箱から取り出すたび、
そして夏の終わりにまた箱にしまうたび、
一緒に買い物したあの日の天気や、
並んで歩いた代官山の街並みや、
風鈴を買ったお店の素敵な雰囲気などが
ぱっと脳裏に立ち表れて、ちょっとだけ
センチメンタルな気持ちになります。


その友人とはもう長らく会っていないけれど、
風鈴を手にするたびに、彼女のことを
ふと思い出します。
一緒に笑い、一緒に泣き、いろいろな
場所で遊び、おいしいご飯を食べ、
10代から20代にかけてのキラキラと
輝くような時間(今思うと)の中で、
たくさんのことを共有してきました。


遠く離れてしまったけれど、
元気でいるかな、どうしているかな。
風鈴の向こうに見える空に、今でも
時折思いを馳せます。


そういう思い出がつまった物を、
今でも長く大事に所有していること。
季節が巡るたびにそれを自在に
取り出して、懐かしみ愛おせるということ。
そういうものが自分の身近にあるということに、
大人ならではの贅沢さと幸福を
感じているこの頃です。

転がす石

前回の投稿から、1年近くの日が過ぎてしまいました。

その間、いろいろなことが自分の身に起こり、
書きたいこと、書こうと思っていたことが
ふっつりと消えて、何も出てこなくなっていました。

もう、誰かに向けて転がす石は
自分の中には何も無いのかも。
そんなふうに感じていました。

時間が経過し、少しずつ何かが回復しつつある今でも、
ポケットの中の石ころは、砂粒のように小さいままです。
それはひょっと気を抜いていると、
見過ごしてしまうぐらい小さな小さなものです。

それでも、何も無いよりは良いのかも。
そう思って、こうして久しぶりに文を綴ってみることにしました。
誰かのためというよりは、今は自分自身のために。

外ではまだ蝉がみんみんと鳴いていて、
風鈴が時折ちりん、と音を立てます。
それでも噴き出すような汗や、まとわりつく湿気が
少しずつなくなり、夜には虫の音が交じるようになり、
ちょっぴりだけ秋の気配が見受けられるようになってきました。

今日は、高校野球の決勝戦
記念すべき100年目の大会で勝利を収めるのはどちらの高校なのか。
これを書いている今、ちょうど試合中なのですが、
気になるので、書き終えたらアイスでも食べながら
テレビ観戦しようと思います。

夏も、もうすぐ終わるなぁ。
PCからふっと目をはずし外を眺めると、
大きくて薄い雲が青空いっぱいに広がっていました。

またゆっくりと、ぼつぼつと。
お付き合いいただければ、幸いです。

5CINEMAS

久しぶりの更新となってしまいました。

お元気にお過ごしでしょうか。

個人的には夏らしいことを
何もせぬまま初秋を
迎えてしまった感があります。

お盆をだらりと過ごし、
甲子園の試合をぼんやりと眺め、
アイスやスイカをかじって
のんびりとしていました。
夏らしい天気があまり続かない
日々ですが、スイカだけは
やたら甘くておいしかったのが
嬉しいです。

さて、だいぶ時間があいて
しまいましたが、6月の
イベント向けに制作したzine
『5CINEMAS』の電子版を
noteにて公開したので
お知らせです。

春夏向けの超個人的
おすすめ映画5作品の紹介が
こちら
読めます(有料¥200)。
※購入にはサイトへの登録手続きが必要になります。

冬に制作した『8CINEMAS』に
引き続き、超個人的では
ありますが、季節を感じながら
映画を楽しむ参考に
していただければ幸いです。

8月も残りわずかではありますが、
どうぞ夏バテしませんように。
お体ご自愛して元気に楽しく
お過ごしくださいね。

イベント告知

6月24日(土)25日(日)に
群馬県高崎市にあるSNARKで
開催される第8回ZINPHONY
(ジンフォニー)にzineを出品予定です。

f:id:orange-camomille1402:20170622144504j:plain

イベント詳細
 ↓ ↓
ZINPHONY


私は今回で3回目の参加になります。


出品予定のzineの内容は
前回に引き続き、またまた
映画のzineです。
それと昨年の夏に出した、短歌と詩の
zine『いつかの水と月の夜』も、
合わせて出品予定です。
前回が寒い季節向けの
個人的おすすめ映画だったので、
今回は春夏に向けたおすすめの
映画となります。


予想外のアクシデントで
前回の紹介数(8作品)よりちょっと
少なく5作品の紹介となりますが、
その分内容をボリュームアップ(若干)して、
どんな雰囲気の映画なのか
伝わりやすいように、
前回手抜きした(すみません)
パッケージ写真も掲載しています。
お値段¥200で出す予定です。


映画が好きな方、そうでもないけど
たまには観るよという方、
ほとんど観ないけどコイツどんな
映画観てるんだろ、という
冷やかし半分の方、なんでも良いです。


写真や文芸や音楽や料理や
ローカルネタなどなど、
色んなことをテーマにした個性豊かな
zineが手に取れる楽しいイベントなので、
お近くの方やご興味ある方は
ぜひぜひいらしてみてくださいね。
また、もしご希望の方がいれば、少し
遅くはなりますが、直接でのお申し込みでも
郵送料なしで発送させていただこうと
考えていますので、ご興味ある方は
お気軽にこちらまで。
(返信は少し遅れるかもしれません)。

twitter:@mizutsukiyo0214
mail:mitchell.orange1402@gmail.com


なお、創作系SNS「note」に
登録をされていない方にはちょっと
手続きが面倒ですが、前回に引き続き、
電子版もまた作る予定でおりますので、
完成したら告知させていただこうと思います。


前回同様またまたドタバタと
慌ただしくやっております。
搬入期日は一応明日まで。
まだ完成していない!
間に合うのか、私。

はい、ベストを尽くして頑張ります。


それでは告知でございました。
皆様どうぞ良い一日を。

声の記憶

「親しい人が亡くなってまず
何が悲しいかって、その人の声が
聞けなくなることなんだよね」。


ある晴れた日の午後。
以前の職場で仲良くさせて
もらっていた先輩と久しぶりに会い、
カフェに向かって一緒に
歩いていた時のことです。
数カ月前に自身のお姉さんを
亡くされた先輩が、そんな話を
してくれました。


顔や姿は写真を見れば思い出せるもの。
でも声は、録音していれば別だけど
時間の経過と共にだんだん記憶が
薄れていってしまう。
それがひどく寂しいのだと、
先輩は言うのでした。


自分を囲む空間の中で、
親しい人の声が震動するということ。
そして、その震動を自分が
キャッチするということ。
さらに自分もまたその親しい人に向けて
声の震動を届けるということ。
それはライブのセッションにも似た、
その場限りの貴重な瞬間と時間と
音のやり取りであり、その「震え」が
あるからこそ、人は人の心を動かしたり
動かされたり、誰かとより強く
結びついていられるのかもね、
ということをカフェへの道すがら、
私たちはぽつりぽつりと話したのでした。


そういえば、ある統計によると
遠距離恋愛のカップルというのは
かなりの高確率で長続きしないのだそうです。
それは、距離や時間の制約による
スキンシップの欠乏もさることながら、
生の空間を通した声の
コミュニケーションによる減少も
大きな要因なのかもしれない、と
先輩とその話をしながら
ぼんやり考えたのでした。


目で見て、肌で触れて、耳で聞いて。
そうやって人は、自分の体の感覚を
使いながら誰かや何かの気配を感じ取り、
判断し、関係を密に築いていくのかもしれません。
意志の疎通は文字と文字だけで十分できる
ものだけど、それでも“ライブ”ほど
ストレートに強く響き、人の心に
印象付けるものは存在しないのかもしれません。


響き合う、音と音。
声と声。
セッションは、大事ですね。
私たちは知らず知らずのうちに
人生の中で誰かと音楽を
奏で合っているのかもしれない。


そして、自分が大切に思うその人と
同じ空間の中で声を響かせ合う時間
というものは、自分が思っている以上に、
存外短いものなのかもしれません。

「人生万歳! 」

少し前にDVDでウディ・アレン

『人生万歳!』という映画を観ました。

 

人生讃歌を思わせる前向きな

タイトルなのですが、

ラリー・デビッド演じる

初老の主人公ボリスは

とにかくシニカルで悲観的で

ネガティブです。

 

なんでも否定から入って

周りをも暗くさせてしまうタイプが

身近にも実際にいるものですが、

ボリスもまさにそんな人。

根は優しくて思いやり深いのに、

ひねくれ者と誤解を受けやすいのです。

 

そんなボリスがある夜、

家出をして露頭に迷った若い

女の子メロディと出会い、

行きがかり上、家に泊めて

あげることになります。

無邪気でエネルギッシュな彼女に

ペースを崩され、最初こそ早く

追い出したがっていたボリスですが、

次第に気持ちは変化していきます。

 

このボリスとメロディを中心に、

2人を取り巻く人々の人間模様が

描かれてゆきます。

テンポ良く、心楽しく、

そしてちょっぴりしみじみもする

素敵な映画でした。

 

映画のラスト近く、ボリスのこんなセリフが心にとても沁みます。

 

「あらゆる幸せは束の間だ。
だからこそ上手くいったら
〝何でもあり〟だ。
でも勘違いするな。
それは才能とは無関係。
あなたが存在しているのも
〝運〟なんだ」

 

時折、からかうように、

そして何かを諭すように、

スクリーン側から映画を楽しむ

私たち観客に向けて

語りかけてきたり視線を

送ってくるボリスや

ほかの登場人物たちが

とてもチャーミングな

映画でもあります。

 

奇跡のようにこの世界に存在し、

生きて、呼吸してるなら、

つかの間の幸福を

思う存分堪能しよう、

めいっぱい楽しもう。

そんな明るくて温かい

気持ちになることができました。

 

f:id:orange-camomille1402:20170420012347j:image

 

 

【映画データ】

2009年 アメリ

監督:ウディ・アレン

出演:ラリー・デビッド

    エバン・レイチェル・ウッド

    パトリシア・クラークソン  ほか